活動報告 「春の盗賊」(太宰治)

皆さんこんにちは。北海道大学エンタメ系総合文学サークルのツバサです。

本日は、自己紹介やサークルの説明も兼ねながら太宰治の短編「春の盗賊」について話し合いました。

 

講師役のTさんが話す前の皆さんの太宰のイメージは次のよう

・鬱々とした青春を送っていた

・子供っぽい

・自尊心が強い

etc… でした

 

「生れて、すみません。」

この言葉は太宰治の著作「二十世紀旗手」に乗っている言葉。でも、この言葉は太宰が本人が言った言葉ではなく、太宰の作品の中にいる主人公が言った言葉です。

Tさんは言います。「太宰本人の人物像は作品のイメージとはかけ離れているのではないか。例えば、「女生徒」といった明るい作品だってある」

Tさんの主張は「太宰は廃人として語られるのはもったいない」というものです。はたして、太宰は自分が俳人として読まれるのを望んでいたのだろうか。

よく、世間一般では「人間失格」は太宰の遺書的な存在だったといわれています。

「人間失格」は廃人同然となった大庭葉蔵の手記からなる物語ですが、その前後に「はしがき」と「あとがき」があります。その最初の部分、はしがきでは、大庭の手記は大庭の知り合いのバーのマダムが預かっていて、それを「私」が文章として起こした。ということが語られています。

もし、「大庭」=「太宰」という読み方を太宰がしてほしければこのような記述はいらないのではないでしょうか。わざわざこの説明を入れたのは太宰と大庭との距離を話したかったからではないのでしょうか。

 

さて、やっと「春の盗賊」についてです。

この短編では

「いったい、小説の中に、「私」と称する人物を登場させる時には、よほど慎重な心構えを必要とする。フィクションを、この国には、いっそうその傾向が強いのではないかと思われるのであるが、どこの国の人でも、昔から、それを作者の醜聞として信じ込み、上品ぶって非難、憫笑する悪癖がある。」

という記述があります。そして太宰はこの短編の中でこの話はフィクションであるということをさらに強調します。

「次に物語る一篇も、これはフィクションである。私は、昨夜どろぼうに見舞われた。そうして、それは嘘であります。全部、嘘であります。そう断らなければならぬ私のばかばかしさ。ひとりで、くすくす笑っちゃった。」

小説の中の登場人物と自分を同一視されたくない。そんな思いが込められているのではないでしょうか。

「そろそろ小説の世界の中にはいって来ているのであるから、読者も、注意が肝要である。」

この表現でこの短編の全体的な構造が示されます。つまり、前半がエッセイ。後半がフィクションということです。わざわざ「これはフィクションだぞ」と注意喚起しているわけです。

 

これで、太宰は登場人物と同じではないという思いがあったことはわかりました。でも、少し立ち止まってみてください。太宰はこの後に書く「人間失格」では「私」という一人称を使っているのです。もし、フィクションとして読んでほしければ「私」という一人称を使わなければいい。「私」を使うと主人公が太宰本人と同一視されがちなことは太宰本人も自覚しているのです。ここから見えてくる太宰の人間像、それは

子供っぽい。

ということなのです。読者に『主人公は「私」だぞ』って煽っておいて「フィクションとして読め」という。こんな人間が果たして暗い人間なのかどうか。太宰はやっぱり面白い人です。

 

青空文庫へのリンクです

春の盗賊

http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/266_20031.html

 

二十世紀旗手

http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/234_19994.html

 

人間失格

http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/301_14912.html

 

走れメロス

http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1567_14913.html

 

女生徒

http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/275_13903.html

tsubasaxsapporo について

ツバサは、札幌の大学生を中心としたゆるーい文学サークルです。 お勧めの本を紹介したり、感想を言い合ったり、小説やエッセイ、評論、レビューなどの執筆をしたりしています。 小説以外にも、映画やアニメ、演劇、ミュージカルなどお芝居系も扱います。 御用の方はどうぞお気軽に tsubasaxsapporo@gmail.com までお願いします。
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